ジャマイカ連盟との交渉について

ャマイカ連盟との交渉について

 下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会(下町PJ、細貝淳一ゼネラルマネージャー)は、2月5日に大田区産業プラザにて記者会見及び協力企業への説明会を下記の内容にて行いました。

 下町PJは、ジャマイカボブスレースケルトン連盟(ジャマイカ連盟、ネルソン・クリスチャン・ストークス会長)に対し、ソリ開発・貸与の契約解除および損害賠償請求の法的措置を取る手続きを進めます。下町PJでは昨年12月にジャマイカ連盟がラトビア・BTC製のソリを使い始めて以来、再三に渡り下町ボブスレーの使用を呼び掛けてきました。クリス・ストークス会長は1月20日に「五輪は下町で」と両国大使館に表明していますが、以後、下町PJに対し書面で採用・不採用との正式な表明はありません。

 ジャマイカ連盟とはお互いの夢の実現のため2年前に契約した原点に戻ろうという一心で話し合いをしてきました。今回の法的措置は提訴したということではありません。強調したいのは今回2月2日に契約書に則り2週間前に行う契約解除及び損害賠償請求の法的措置をしますという「予告」をしたという点です。あくまでこれまでの経緯を思い出し原点に戻り、下町ボブスレーを使ってもらうことに立ちかえってもらうことを促すものです。ピョンチャンにいるジャマイカ連盟幹部の言葉がそうさせるきっかけとなりましたが、10号機のソリは今もピョンチャン付近にあります。我々のこの予告は五輪での採用を表明し、実際に五輪で使用されれば損害賠償請求はしません。

ジャマイカ連盟は昨年12月のワールドカップ参戦からラトビア・BTC社製ソリの使用を始めました。直前の11月に行われた北米杯では10号機を使用し銀メダルを獲得しており、レポート内容も良好なものでした。しかしながら欧州への輸送時にドイツでの輸送機関のストライキにより下町ボブスレー10号機が届かず、BTCというソリを調達したという連絡がありました。これはBTCでポイントを獲得し、下町ボブスレーのソリのさらなる改良につなげるというものでしたのでこの対応を受け入れました。この時点でドイツ輸送会社のストライキは実際にあったものの、ジャマイカ連盟はBTCの最新ソリを用意した上に、ステッカー類も万全であったことに我々は衝撃を受けました。

【スピードについて】
 このドイツでのワールドカップで7位に上位入賞したことにより、ジャマイカ連盟は下町ボブスレーのさらなる改良の要望などが始まりました。我々としては即対応しオーストリアへ飛び対策を開始しました。ジャマイカ連盟が指名したオーストリア人技術者と共に改良し、オーストリア代表女子選手で12/9のワールドカップにて5位獲得のBEIERL Kartin選手がテスト滑走しました。ジャマイカチームがBTCを持ち去ってしまったため、比較対象はドイツのワルナーというソリにしました。このソリはテストを開催したインスブルックのコースで最速と評価されており、そのソリとリザルトタイムのデータにおいても滑走評価でも同等でした。下記数値データを参照ください。Japanが下町ボブスレー10号機です。この数字・データによりジャマイカ連盟が指名したオーストリア人技術者は「下町ボブスレーはBTCより速く、ワルナーと同等」と評価しました。

<<ドイツワルナー製ソリとの比較リザルト>>

 BEIERL Kartin選手の滑走後のコメントでは「下町の方がハンドルが繊細など操作の特性はそれぞれ特徴があるが、性能は同レベルで、振動も気にならない。」と言っております。我々もこのデータを根拠としてジャマイカ連盟に伝えています。ただ、ジャマイカ連盟とは下町ボブスレー採用の契約を結んでいるのであり、本来なら他のソリとテストをして”比較”するという事自体受け入れがたいのですが、選手のため、下町ボブスレーをさらに速くするために全力を挙げました。以後スピードについてはジャマイカ連盟より言及されていません。

【レギュレーションについて】
 レギュレーションチェックを短期間の中で3回にわたり行いました。1回目に受けた指摘はすべて対応済みで、2回目は審判員から「ソリは問題ない」とスムーズに合格しました。合格したレギュレーションの証明証の書類を請求し、揃い次第送ってもらえる手配となっています。3回目は2点の軽微な修正を指導されました。パンバーの厚みがわずかに足らないという指摘にはCFRPシートを貼ればOKといった軽微なもので対応は万全です。

 大会当日のレギュレーションチェックは不正なソリを失格にするためのものですが、事前のレギュレーションチェックは課題を明らかにし、選手とソリメーカーが協力して対応を万全にするためのものです。数回抜き打ちの様に突然レギュレーションチェックを求められましたが、下町PJでは誠意をもって対応し、五輪本番前にもう一度マテリアルチェックを受ける機会をセットし、ジャマイカ連盟に協力を呼びかけました。

【安全性について】
操舵によるランナーの稼働範囲の角度が大きいという指摘がありましたが、レギュレーション範囲内であり、ステアリング部の調整により即時にその場で対応可能なものです。

 契約の第4条にあるのですが、ソリ引き渡し後の責任はジャマイカ連盟にあり、またジャマイカスペシャルと呼ばれている女子選手用の9号機と10号機に関してはジャマイカ連盟の要望どおりに製作した形状であります。男子用の6号機と8号機は下町モデルです。9号機のジャマイカモデル製作後に、2017年にもジャマイカ選手の要望を反映して再度10号機を製作しました。だからといってただソリを製作しハイどうぞということではなく、協力を表明し最大限対応してきました。ソリが遅いという事に対しては上記リザルトの数値によるデータが示しているとおり世界水準のソリです。また前述の通りレギュレーション対応も安全性も万全です。

2月2日よりメンバー5人がピョンチャンに入り、前述の3回目のレギュレーションチェックでの指摘への対応のため会場で待機、ジャマイカ本国のジャマイカ連盟幹部に協力を呼びかけました。しかし承認を得られず、現場でジャマイカチームのスタッフを待っていました。現れたジャマイカチームのスタッフが「我々のソリではない」と発言し、協力を拒否しました。このため10号機を引き取り会場外の協力してくれている工場で整備作業をしました。並行してジャマイカ連盟にはたらきかけ、2月5日早朝より協議するものの下町ボブスレーを使うための承認を得られず一昨日の記者会見に踏み切ることになりました。

 オリンピックの会場や保管所はセキュリティが厳しく承認を得られないと会場に入れません。クリス・ストークス会長は1月20日に「五輪は下町で」と両国大使館に表明しています。下町ボブスレーに直接書面で連絡がないのでそれを求めてきました。話が二転三転する中、様々な理由をつけて下町ボブスレー10号機を五輪では使わないということを前提にしている状況が続いています。協力して進めてきた2年間を思い出し五輪当日まで最後はソリを使ってくれることを信じています。

 今後については契約書の規定に基づき弁護士と相談しながら手続きを進めます。ジャマイカ連盟およびジャマイカ選手とはこの2年間、共に協力して夢を追いかけてきました。その人々に損害賠償を求めることは我々にとっても苦痛です。しかし下町ボブスレーを支援いただいた多くの製作協力工場やスポンサーなどたくさんの方々に対し、下町ボブスレーの正当性を示す責任があります。また、明確な契約書があり努力して良いソリを作っても採用されない、との悲劇がボブスレー界で繰り返されないためにも、本当に五輪で下町ボブスレーを使っていただけないなら、損害賠償請求は必要と考えています。

2018年2月7日
下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会