下町ボブスレーQ&A
※注意:以下のQ&Aは2013年初めに書かれたものです。あらかじめご了承ください。
・なぜボブスレーなの?
大田区は金属加工会社が集積しており、多品種小ロットや試作品が得意な会社が多いです。冬季の競技は道具の重要性が高く、大田区や日本の技術がPRできるのではという想いからボブスレーに挑戦しました。
・開発で苦労したことは?
設計図完成から実機完成まで1カ月あまりの短期間だったことです。
ただ大田区の町工場はいつも超短納期で高精度の部品加工を任されているので、普段通りの仕事ともいえます。
・開発にはどれくらい費用がかかったの?
1500万円を超えています。参加企業が無償提供している部分も多いので、実際にはもっとかかっています。
・大田区ってどんな所?
大田区は、従業者9人以下の企業が約82%を占める“中小零細企業のまち”です。中でも機械金属工業は、工場数において区内全工場数の80%以上を占め、多種多様な技術の集積と企業間ネットワークを活かして、高精度で複合的な加工技術と短納期に対応できる迅速性を実現し、日本の産業全体の屋台骨となり、先端的高度技術開発を支えています。(参考資料:大田区工業ガイド)
・町工場って?
大田区は昼と夜の人口がほとんど同じというバランスで、生産活動と居住空間が同じという事が特長です。企業の規模は小規模が圧倒的多数です。従業員季語3人以下の家族経営的形態が区内の50%。9人以下の企業を含めると約82%となります。多様な製品を生み出す、基礎となる機械加工技術に特化した企業群が集積しています。専門に特化した技術・技能を有する企業が集積しており、設計指示ではない加工もできる経験と技術を蓄積しています。高難度の加工や製品開発にかかわる試作品なども得意。自社だけではできない加工は地域の仲間のネットワークで解決するのも日常的です。(参考資料:大田区工業ガイド)
大田区に住んで、大田区で働く人々が多く、町に工場が溶け込んだ街並みが日常的な風景であり、しかもその町工場は規模は小さくても優れた工場が多く、ネットワークを形成しています。
・このプロジェクトはなにを目指しているの?
モノづくりの原点である「困っている人を助ける」・「ネットワークによって難題を解決する」・「新たな価値を提供する」・「夢のあるモノづくりをする」という主旨に賛同し、ボブスレーのソリを製作、また、選手のサポート・育成を行い、オリンピックでメダルを獲得するという目標を実現・推進すること目指しています。
このプロジェクトを通じ日本が弱いとされてきた「もの・ことづくり」の基礎を築き、大田区・日本のモノづくりの将来の可能性を世界に示し、さらに次世代を担う若者へ「ものづくりは面白い」と五感に訴えます。
ランナー(金属)の低摩擦化技術は、風力発電などの次世代エネルギー開発には必須の要素技術であり、またボブスレーの土台は金属と炭素系素材で構成され、この技術は航空機などに採用されており、環境・航空機分野へ進出の第一歩となります。
「ボブスレー」製造に参入することにより、大田区・日本のネットワークの世界的な技術信用度および開発プロデュース力をPRし、欧米市場のスポーツ案件や環境エネルギー開発、航空機産業などへ提案、受注獲得を目指します。
下町ボブスレーQ&A
※注意:以下のQ&Aは2013年初めに書かれたものです。あらかじめご了承ください。
ボブスレー開発についてのご質問
―大田区の町工場が、ボブスレー作成に挑戦。まずその経緯を教えて下さい。
大田区の加工技術は高いと言われてますが、BtoB製品・部品が多く、一般の方には分かりにくくPRが難しい部分があります。日頃から何か具体的なモノを通して技術・ネットワークを表現できないかとの議論があり、オリンピック競技に使う道具を製作してアピールすることを、マテリアルの細貝淳一社長らが考えていました。一方で、大田区のモノづくりの力をブランド化する活動を行っている「大田ブランド推進協議会」の事務局役を務める大田区産業振興協会のスタッフが、ボブスレーソリは外国製しかなく選手は中古品などを使っているとのニュースを目にし、マテリアルの細貝淳一社長にボブスレー開発を提案しました。大田ブランド登録企業数社にも声を掛け、次いで参加者それぞれの人脈で、レーシングカー向けにCFRP製ボディを設計・開発している童夢カーボンマジック、熱流体解析ツールを手掛けるソフトウェアクレイドル、東京大学大学院教授の加藤孝久氏などにも声を掛けていきました。これらのメンバーで、「下町ボブスレー」ネットワークプロジェクトとして、ボブスレー日本代表のソリの開発に名乗りを上げ、2011年12月にプロジェクトのキック・オフ・ミーティングを開催しました。
―なぜボブスレーなの?
大田区は金属加工会社が集積しており、多品種小ロットや試作品が得意な会社が多いです。冬季の競技は道具の重要性が高く、大田区や日本の技術がPRできるのではという想いからボブスレーに挑戦しました。
―開発で苦労したことは?
設計図完成から実機完成まで1カ月あまりの短期間だったことです。ただ大田区の町工場はいつも超短納期で高精度の部品加工を任されているので、普段通りの仕事ともいえます。
―製作に関わった会社は何社か
1号機の部品協力は約30社、その他協力入れると約40社です。
―どのぐらいの部品でできているか
図面点数は約150枚、部品点数は約200点です。
―開発にはどれくらい費用がかかったの?
約1800万円です。参加企業が無償提供している部分も多いので、実際にはもっとかかっています。
―ボブスレーに必要な技術は、大田区の町工場に「揃っていた」ということ?
ボブスレーそりの構造は自動車などに比べて単純であります。単純なだけ基盤技術である加工・溶接・板金・ばねなどの精度やモノづくりを熟知した組み合わせ技術が必要となります。大田区は日本の製造業の縮図と言われ、技術の集積があるのが強みです。
―下町ボブスレーはなぜ速いのか
素材や作りの良さはあるが、選手の意見に合わせて調整ができるようになったのが要因としては一番大きいといえます。
―世界のボブスレー開発競争について。名だたる企業について。
ドイツはBMW、イタリアはフェラーリ、アメリカはBMW、イギリスはマクラレーンです。
―すでに試作品が完成。その特徴やこだわりについて。
・東レカーボンマジックによって、F1やレーシングカーと同じ最新技術で作られたボディや溶接構造などをレギュレーション内で出来るだけ省き、一体削り出し加工によって強度化および軽量化し、フレーム部品を10日間という短納期製作にもかかわらず、1回で組みあがったことが特徴です。
―全くの初の試み。開発はどのように行われた?苦労した点は?
・開発は現行のソリの構造を確認し解析することから始まった。
・製作に関しては、今までの仕事の延長線上にあるため、特に苦労はありませんでした。
・試走に関しては、まったく初めての試みで、ソリを早くするためには滑らせてどの部分を改善していくか、トライ&エラーの繰り返しでした。
・ボブスレー競技・ルール・レギュレーションに関する情報が少なく収集するのに苦労しました。また、情報が英語で抽象的な表現のため、直接FIBT(国際ボブスレートボガニング連盟)へ聞かないと分からない部分が多いです。
結果についてのご質問
―2012年12月23日。全日本選手権大会にて、下町ボブスレーデビュー!その結果は?
女子チームである吉村・浅津選手に使用していただき優勝となりました。また、コースレコードである55秒14に0,09遅れの55秒23という結果もでて第一段階は成功と言えます。
―2013年3月。アメリカ国際大会にて、下町ボブスレー国際デビュー!その結果は?
■3月6日ノースアメリカンカップ第8戦 出場チーム数20チーム11カ国
総合順位7位1本目57.06 2本目57.98 合計1:55.04 トップとの差+1.13
優勝は韓国チーム 2・3位はアメリカチーム
■3月7日ノースアメリカンカップ第9戦 出場チーム数19チーム10カ国
総合順位7位 1本目57.53 2本目57.66 合計1:55.19 トップとの差+1.54
優勝は韓国チーム 2位アメリカ 3位オランダ
■総評 今大会は、下町ボブスレーデビュー・韓国チーム2日連続の優勝の快挙とアジアが注目される大会となりました。国際大会に出て下町ボブスレーは他国のコーチ・選手からも評価をもらえましたが、ソリの性能はもちろんのこと、選手育成・発掘とソフトハードのすべての充実が必要と世界基準を痛感させられました。
ソチ五輪についてのご質問
―ソチ五輪への手ごたえ、見えてきた課題は?
・日本ではボブスレー競技はマイナースポーツであるため、まだまだ世界との差は大きいです。
(ドイツ・アメリカ・ロシアなど強豪国は国家予算で選手強化・ソリの開発をしている。)
・ボブスレーという競技は、選手のスタートタイム・操作技術、ソリ空気抵抗・ランナーの摩擦抵抗の軽減が重要となってきます。
・選手発掘・育成・そり開発がチームとして一体となって、初めて勝てる競技と言われています。
・ボブスレーは原則18歳未満競技禁止のため、陸上競技や他競技からの転向や兼任が多いです。
・他の競技で有望な選手などが発掘・育成、ソリの改善ランナーの開発という条件が揃えば、メダル獲得の可能性が高い競技と言われています。そのためには継続した取組が重要となってきます。
―これからソチ五輪まで費用はいくらかかるのか
長野との往復や海外遠征など、そりの完成後も1000万円以上の資金が必要とみています。町工場で負担できる金額ではなく、大田区産業振興協会を通じて寄付をお願いしている。すでに地域の信用金庫さんなどの企業からご支援いただいているほか、大田区民の個人の方々からも寄付が集まり始めています。年金生活なんだけどガンバっておおばあちゃんから1万円をいただいたと聞いて、絶対に五輪に行かなければと思いました。
―ソチ五輪代表はどうやって決めるのか
日本ボブスレーリュージュスケルトン連盟さんが各選手の実績などを考慮して決めると聞いています。
―これからの動きは?
日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟と大田区産業振興協会が包括協力協定を結び、選手の声を生かして2号機の開発を進めることになりました。設計を6月までに終え、7-8月で部品を加工、9月に組み立てを完了し10月から実戦テストを進める計画です。しかし、資金が足りていないので皆さんのご協力が必要となっています。
大田区についてのご質問
―大田区ってどんな所?
大田区は、従業者9人以下の企業が約82%を占める“中小零細企業のまち”です。中でも機械金属工業は、工場数において区内全工場数の80%以上を占め、多種多様な技術の集積と企業間ネットワークを活かして、高精度で複合的な加工技術と短納期に対応できる迅速性を実現し、日本の産業全体の屋台骨となり、先端的高度技術開発を支えています。(参考資料:大田区工業ガイド)
―町工場って?
大田区は昼と夜の人口がほとんど同じというバランスで、生産活動と居住空間が同じという事が特長です。企業の規模は小規模が圧倒的多数です。従業員季語3人以下の家族経営的形態が区内の50%。9人以下の企業を含めると約82%となります。多様な製品を生み出す、基礎となる機械加工技術に特化した企業群が集積しています。専門に特化した技術・技能を有する企業が集積しており、設計指示ではない加工もできる経験と技術を蓄積しています。高難度の加工や製品開発にかかわる試作品なども得意。自社だけではできない加工は地域の仲間のネットワークで解決するのも日常的です。(参考資料:大田区工業ガイド)
大田区に住んで、大田区で働く人々が多く、町に工場が溶け込んだ街並みが日常的な風景であり、しかもその町工場は規模は小さくても優れた工場が多く、ネットワークを形成しています。
―『4000の町工場』たちが持つ、その洗練された技術とは端的に言うとどういうものなのか。
1.アナログとデジタルが融合した金属等加工に特化し、ミクロン単位の精密な部品加工と顧客ニーズと自社ノウハウのすり合わせによる製品提案。また、それを時には1日単位という短い時間でも緊急対応させるスピード。
2.難題と言われる課題に対して集積力を生かしたネットワークにより解決する問題解決力と情報共有できている所。
3.ニッチ高シェアの自社製品を持っている所。
―これまでの世界的にシェアを独占している商品など、その技術力を象徴するものを教えて下さい。
・最初に実用的な炊飯器を開発。東芝が大田区の町工場へ提案し開発(1955発売)
・世界初のパソコンのマウス開発・OEM製造。アルプス電気(1985MSから販売)
・アイフォンのめっき・部品加工など【過去】中国でやっていたがうまくいかないため大田区へ依頼
・はやぶさや人工衛星に使われる部品
・医療麻酔やATMのお札を数えるのに使う真空ポンプ
・新幹線の傾斜シリンダー、瀬戸大橋の陸橋を支える大型シリンダー
等々企業間取引であるBtoBの産業機械製品・部品が多い。
プロジェクトについてのご質問
―ボブスレー開発を通じて、改めて気づいたこと、可能性とは。
・夢のある取組や世界観には、町工場から発信する事業でもメディアを含め沢山の注目を浴びるということが改めて分かりました。また、世界を相手にしていくことによって逆に日本というものを再認識させられました。
・ボブスレーに関わらず、可能性のある新規事業というものはまだまだ沢山あり、これからの日本には成功・失敗に囚われず挑戦していく姿勢・それを認めてもらえる風土が重要とも感じます。
―その先にあるものは。
ボブスレーを通じて大田区の技術・ネットワーク・チャレンジを皆様に知っていただき、ボブスレーに使われる技術を活用して航空機分野の進出を考えています。また、夢のあるチャレンジとして、少しでも日本を元気にできればと思っています。また、次世代にもモノづくりは面白いと感じていただき、少しでも中小企業に興味を持ってもらえれば幸いです。
―このプロジェクトはなにを目指しているの?
モノづくりの原点である「困っている人を助ける」・「ネットワークによって難題を解決する」・「新たな価値を提供する」・「夢のあるモノづくりをする」という主旨に賛同し、ボブスレーのソリを製作、また、選手のサポート・育成を行い、オリンピックでメダルを獲得するという目標を実現・推進すること目指しています。
このプロジェクトを通じ日本が弱いとされてきた「もの・ことづくり」の基礎を築き、大田区・日本のモノづくりの将来の可能性を世界に示し、さらに次世代を担う若者へ「ものづくりは面白い」と五感に訴えます。
ランナー(金属)の低摩擦化技術は、風力発電などの次世代エネルギー開発には必須の要素技術であり、またボブスレーの土台は金属と炭素系素材で構成され、この技術は航空機などに採用されており、環境・航空機分野へ進出の第一歩となります。
「ボブスレー」製造に参入することにより、大田区・日本のネットワークの世界的な技術信用度および開発プロデュース力をPRし、欧米市場のスポーツ案件や環境エネルギー開発、航空機産業などへ提案、受注獲得を目指します。